生活を共にしているカブトムシたち(雙峰祭)

カテゴリー:コラム雙峰祭2021

投稿日 2021105

更新日 2021年10月6日

みなさんこんにちは。m.m.(@mmITF_84)と申します。今回は雙峰祭のコラムということで、私の大好きな生物である「カブトムシ」について語りたいと思います。

カブトムシといえば、最も有名な昆虫のひとつというイメージをもつ人も多いのではないでしょうか。いわゆる日本のカブトムシであるヤマトカブトは日本全国の森に広く分布し、夏になって現れる成虫はその地の少年少女達の心をわしづかみにするほどのかっこよさです。また大人になっても「ブリード」という形でカブトムシの飼育を行っている人は少なくありません。

ということでここでは私が現在飼育している3種のカブトムシについてお話しします。

 

カブトムシ

まず1種目は先ほど触れた「カブトムシ」です。

ヤマトカブト♂
ヤマトカブト♀

日本の人が「カブトムシ」というワードを聞いて真っ先に思い浮かぶのが本種でしょう。本種は日本だけでなく中国や東南アジアの国々、インドなどでも亜種としての生息が確認されています。実は日本本土に生息するヤマトカブトも亜種のひとつであり、国内にはこの他にオキナワカブト、クメジマカブト、ツチヤカブト、屋久島・種子島亜種などの亜種が存在します。いつか採集しに行ってみたい…!!!

またヤマトカブトは国内の亜種の中では最も大型化し、1980年代に沖縄県でヤンバルテナガコガネが発見されるまでは日本最大の甲虫としても知られていました(今年私が採集した個体は最大全長80.1mmですが、これまでの野外採集個体の最大全長は約87mmだそうです、デカすぎて固定資産税がかかりそう)。

海外産のカブトムシと比較したときに最も特徴的なのはやはりその角の形状でしょう。ヤマトカブトのように頭角の先端が広がり4又にも枝分かれしているものは世界中探してもほとんどいません。この形状は殺傷能力は低いものの、争いの際に角を相手の下に入れ、投げ飛ばすのに適した形をしています。これは私の勝手な推測になりますが、争いの際にみだりに同種を殺して絶滅のリスクを高めないようにこのような形に進化したのかもしれませんね。まさに「武士は無益な殺生はせぬ。」 日本のカブトムシにはピッタリですね。また海外産のカブトは蛹の部屋である蛹室を横向きに作ることが多いのですが、カブトムシは縦向きに作ります。理由はよくわかっていませんが、これも本種の大きな特徴のひとつでしょう。

あと個人的に好きなポイントは飛ぶのが死ぬほど下手なことですね。飛んだと思ったらそのまま背中から地面にダイブすることとかもたまーにあります。完全にギャップ萌えですね、かわいすぎ。

飛ぶ瞬間はかっこいい
飛んだ後はかわいい

ここからはちょっとネガティブなお話を。前述したとおりヤマトカブトの生息地はほぼ日本全国なのですが、北海道にはその種自体がもともと生息していませんでした。しかし1970年代、人為的に持ち込まれたヤマトカブトが繁殖、定着し、国内外来種として生態系への悪影響が懸念されています。さらに沖縄本島にも同様に人為的に持ち込まれ、前述のオキナワカブトという亜種との交雑が進み、遺伝子汚染が深刻化しています。これらの問題は大人気であり、飼育もしやすい昆虫であるが故に起こった悲劇ですが、ただ「最後まで責任をもって飼育する」ということさえできれば起こらなかった問題です。また表面化していないだけでさらに別の問題も起こっているかもしれません。放虫によって何が起こるかを正確に予測するのは困難です。みなさんも飼育を途中で放棄するようなことはしないようにしましょう。
現時点でもう10月ですが、私の部屋ではまだ3匹の個体が元気にしています。

 

コカブト

次に2種目は「コカブト」です。

コカブト♂(右)とコカブト♀(左)
♂の方が♀より前胸部のくぼみが広い

ここつくば市(というか日本本土)で採集可能なカブトムシは前述のヤマトカブトとこのコカブトのみでしょう。本種は黒く小さく、かわいらしいカブトムシで、一瞬ゴミムシのような甲虫に見間違えるかもしれません。カブトという名の通り、たしかにカブトムシに分類されてはいるのですが、この種の生態はかなり独特です。まず本種は他の一般的なカブトムシと違い、なんと肉食性です。自然界では他の昆虫の死体などを食べます。ですが飼育下では昆虫ゼリーなんかも食べてくれるので意外と飼育は簡単です。

カブトムシの死体を食べるコカブト(左)とオオヒラタシデムシ(右)

さらにコカブトは他のカブトムシよりも成長が早く、孵化から2ヶ月後には成虫になります。これは、コカブトは幼虫の状態で越冬できないため、冬がやってくる前に成虫になる必要があるからだと言われています。

コカブトの蛹
8月末の写真ですがこの子は9月末には羽化してました、はやい

このようにカブトという名に疑問を感じるような生態をしていますが、♂の頭部には小さいながらもしっかりと角があります。

コカブト♂
角!ちゃんとあります!!

一般的なカブトムシと異なり樹液にはあまり集まりませんが光には寄ってくることがあるので、夏の夜はぜひ街灯付近の地面を探してみてください。このちょっと珍しい、かわいいカブトムシを見つけられるかもしれません。

 

コーカサスオオカブト

最後は、今私が飼育している中では唯一海外産のカブトムシである「コーカサスオオカブト」です。この個体はジャワ島に生息する原名亜種のジャワコーカサスですね。

ジャワコーカサス♂
ピッカピカ
ジャワコーカサス♀
♂ほどの光沢は無い

実はこの文章を書いているときにちょうど届きました。ヤッター!!!

さてこのカブトムシ、10年ほど前に流行した「甲虫王者ムシキング」などの影響でかなり有名なのではないでしょうか。東南アジアに生息する言わずと知れたアジア最大のカブトムシであり、その全長は最大130mmにも及びます。長く伸びた3本の角、属名のChalcosoma(青銅色の体)が示すとおり黒~緑色に光る体は日本のカブトムシでは味わえない種類のかっこよさと重厚感を醸し出しています。

本種(というか本属)の特徴はなんといってもその凶暴性にあるでしょう。争いの中での同種の♂のみならず、交尾を拒否した♀、そして全く別種の昆虫ですらもその鋭い角で挟み殺したり刺し殺したりしてしまい、さらには既に死んだ昆虫をバラバラにするまで攻撃し続けるというある種猟奇的で非常に危険な一面をもっています。また、前胸部の後端が爪切りのように鋭くなっており、ここと中胸部前端で皮膚を挟まれれば出血の危険性があります(写真赤丸部分)。私はしました。

ここに挟まれるとめちゃくちゃ痛い

もう一つ。本種は前脚が異様に長く、力も強いため掴まれた体の柔らかい昆虫はひとたまりもないでしょう。私たちが掴むときもひっかかれてけがをしないように注意しましょう。私はしました(2回目)。まさに全身凶器と呼ぶにふさわしいカブトムシ、かっこいいが過ぎますね。

個人的な推しポイントはあの胸角の美しい湾曲ですね。ただ真っ直ぐに伸びるのではなく絶妙なカーブを描く悪魔のような角がね…もう…良いんですよ…!!!

胸角のこの湾曲!!
まるで芸術品、ご飯3杯はいける。

どうせなのでさらに話を広げて同じChalcosoma属との関係についてもお話しします。本属にはコーカサスオオカブト以外にも、夏のホームセンターでよく見かけるアトラスオオカブト、ボルネオ島にしか生息していないレアものモーレンカンプオオカブト、そして2004年に日本人によって発見された新種のエンガノオオカブトが属しています(ここではあまりにも情報が少ないエンガノオオカブトのお話は除きます)。これらの種は非常によく似ていますが、実は頭角の形状のみで判別することが可能です。コーカサスは頭角中央部に突起が1本ありますが、アトラスにはありません。さらにモーレンカンプはこの突起が少し小さくなり、2本存在します。さらに分布域について、アトラスは暑さに強いため比較的平地にも生息していますが、コーカサス、モーレンカンプは暑さに弱く標高の高い場所にしか生息していません。一見うまく棲み分けをしているように見えますが、面白いことに後者2種の生息する島のアトラスは小型化する傾向にあることがわかっています。分布域の異なる種がどのような影響を与えているのか…とても気になりますね…!!

国産のカブトムシももちろん最高ですが、また違った魅力のある本種も一度飼育してみてはいかがでしょうか?年間を通して採集可能なのでショップにはお安めの野外品が結構いつでも並んでいると思います。私もいつか現地で採集できたらなーと夢見ております…。

 

私の飼育しているカブトムシの紹介は以上です。このコラムであなたが少しでもカブトムシについて興味を持ったり、新たに知ることができたり、またあなたに私のカブトムシ愛が伝わったりしたなら幸いです。共にカブトムシの沼に沈みましょう()。

思った以上に長々とした文章になってしまいましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。

ありがとうございました!