青春18きっぷでギリギリ日帰り旅
~成田線・銚子電鉄編~

旅人 出待ち柳


 前頁で青梅・奥多摩への夏旅行の記事を執筆しましたが、その旅行で利用した青春18きっぷに1回分の空きができ、他に使いたい人がいなかったことから、今回の日帰り旅を計画することになりました。千葉を目的地として旅程を組んだことがなく、特に房総半島一周とかしてみたいなぁと思って8月下旬くらいに行こうと色々調べていたのですが… その時に限って体調を崩してしまい1週間ほど家から出られず。ちょうど予定が空いていた9月上旬に行こうとするも今度は台風13号。千葉の南部では甚大な被害が出ることに。ギリギリ行けそうなところを見つくろい、成田線沿線に焦点を当てました。日付も9月10日(日)と青春18きっぷの利用期間ギリギリ。

 朝7時に最寄りの牛久駅へ。この旅に行った日がちょうど牛久市長選挙の投票日だったため、行くついでに駅前の投票所で投票。すると私が1番乗りだったために、投票箱の中を見て何も入っていないことを確認しその証明の書類を書くことに。自身2回目の選挙の投票で貴重な体験をさせてもらいました。

 その後7:12発の常磐線上り列車に乗って我孫子へ。我孫子と言えばやっぱり駅構内にある弥生軒の唐揚げそばが有名ですよね。筆者も主に新松戸からの乗り換え(常磐緩行線→快速)で我孫子に来ることはあるのですが、日帰り旅だと目的地で目いっぱい観光する性なので帰りが遅くなるし、如何せん牛久から微妙に近いのでついた時間には閉店していることがしばしば。結局今でも食えずじまいにいます。

 そして、今日のメイン路線の1つ、成田線に乗車。まずは我孫子~成田の32.9kmを結ぶ我孫子支線。「支線」を「個別の路線においてメインの区間から枝分かれする独立した線名がない区間」と定義した場合、JRの「支線」の中で最も駅数の多い路線になります。また「我孫子(あびこ)」「木下(きおろし)」「安食(あじき)」「下総松崎(しもうさまんざき)」など難読駅名が多い路線でもあります。予定ではノンストップで成田まで行って8:41発の銚子行きに乗ろうと思っていたら、線路内での異音の確認による遅れから、列車交換のため下総松崎駅で10分ほど停車。ちょっくら電車から降りて写真を撮ることにしました。ちょうど稲刈りのシーズン直前だったため、金色に輝く稲穂が一面に広がった景色を見られました。あと、下総松崎のローマ字表記が「Shimōsa-manzaki」と下総の「もう」を長音扱いしているところは少しびっくりしました。「もう」が漢字2字にまたがっているので「Shimousa」になると思ったのですが。
 そんなこんなで成田には8:41に到着。同時刻発の銚子行きは我孫子支線から接続できるように3分ほど待ってくれましたが、なんせ千葉→銚子のもう一つのルートである総武本線は台風13号の影響で運転見合わせだったし、青春18きっぷの利用最終日であるだけに人混みの凄いこと凄いこと。なんとかギリギリで乗車しました。成田線の本線は佐倉~松岸の75.4kmですが、全ての列車が総武本線の松岸~銚子間に乗り入れ、同路線の千葉~佐倉間と直通運転することもしばしば。途中の下総神崎駅で、さっきの下総松崎のローマ字表記の件を思い出し、発音は「しもーさ」「しもうさ」のどちらだろうかと考えていたら、乗っていた列車の車掌は「しもふさ」と呼んでいてさらにびっくり。確かに元々は下総・上総を合わせて「総(ふさ)の国」と呼ばれていたので合点はいきます。

 成田駅出発から30分ほどで佐原に到着。ここで散策し、香取神宮を経由して隣の香取駅まで歩きます。橋梁区間が長く、一たび強風が吹けば「外(駅)出た瞬間終わったわ 天気は良いのに進めない」状態になることでおなじみの鹿島線が佐原に乗り入れており、切り欠きの0番ホームに鹿島線のE131系が停まっていました。

 さて、佐原と言えば商いの町であり、17年をかけて日本全国を測量し『大日本沿海輿地全図』を完成させ、国土の正確な姿を明らかにした伊能忠敬の出身地でもあります。地理好きにはたまらない場所ですね。駅前に忠敬の銅像もありました。佐原の町並みは、利根川に注ぐ小野川を挟んで伝統的な蔵や住宅が立ち並んでおり、予約すれば案内付きの舟めぐりもできるようです。時間が限られていたので忠敬の旧宅と記念館だけ立ち寄ることに。伊能忠敬記念館の入館料は通常500円ですが、ちょうど特設展示の準備で一部展示が見られないと言うことで450円と少し安く入れました。展示を見た上で忠敬の意外な一面を知れた気がします。記念館の方は撮影禁止なので気になる方はぜひ現地に行ってみてください。
 佐原で1時間程度観光して、10時過ぎに香取神宮に向かって出発。歩いている途中でなんと山車の曳き廻し(ひきまわし)に遭遇しました。夏祭り…にしては時期が遅いようなと思いましたが、どうやら山車を新調したことのお祝いとして特別に曳き廻しをしていたようです。そのまま香取神宮一の鳥居をくぐっていきましたが、一般の車が通る横を山車が通っていて、迫力がありつつとてもシュールな光景でした。

 山車を追い抜いて先に香取神宮に到着。香取神宮は全国に約400社ある香取神社の総本山で、茨城の鹿島神宮、息栖神社と並んで、大和朝廷の東国開拓の拠点として機能したと推測される「東国三社」の一つとされています。鹿島神宮には今年8月に家族と一緒に訪れたことがあり、次いで香取神宮へ参拝することにしました。鹿島神宮に比べて参道の坂道や階段がきつかったですね… 御神殿は初代神武天皇18年の創建とされているのにふさわしく立派なものでした。参道に、大手の旅行ガイドブックでも太鼓判を押されたわらび餅の店があり、食べ歩き用に購入。黒蜜がかかっていないのですが、わらび餅ときな粉のそれら自体が持つ甘さだけで十分に感じるくらい甘く、とてもぷるぷるとした食感を楽しめました。
 と、のんきにゆっくり食べ進めていたのですが、香取神宮から香取駅に至るまでの道が大分急坂で、途中で走らなければならないほどギリギリで香取駅に到着。すぐ30秒後位に列車が到着し写真を撮る暇などなく、ちょっと気持ちが悪くなった結果景色を楽しむ余裕も失せてしまう始末。この旅が台風13号のせいで急に目的地を変更せざるを得ず、ギリギリの予定立てになってしまったのが理由ですが、読者の皆さんはこんなことにならないように、時間に余裕を持って旅の計画やルート調べをするようにしましょう…

 13時頃に銚子に到着。鉄道で行くと意外に遠かった。そして銚子駅といえば、例の破綻寸前の鉄道会社として一躍有名になった銚子電鉄の始点でもあります。鉄道事業よりもぬれ煎餅やまずい棒などの物販の方が儲かっていて、経営破綻を防ぐために「売れるものなら何でも売ってお金に換える」と線路の石や犬釘まで売ってしまう破天荒さ。そうしたら2021年度、22年度と2年連続黒字化するというので驚きです。最近では南海電気鉄道から2200系2両を譲り受けたことも話題に挙がりました。早速乗っていきます。

 銚子駅の銚電改札はJRのホーム内にあり、切符は車内販売。車掌が列車内を巡回して切符の確認・購入の催促をします。また、各駅にはネーミングライツによる副駅名があり、笠上黒生駅の「髪毛黒生」などは有名でしょうか。各駅の周辺の見所も車掌さんが丁寧に詳しく説明してくれます。本銚子駅はいつぞやの24時間テレビでタレントのヒロミがリフォームを手がけ、大正モダン風の駅舎になっていたり、犬吠駅ではアイドルマスターsideMとのコラボでキャラクターの車内放送が流れたり… 興味と驚きが絶えませんでした。

 終点の外川駅周辺で昼食をとった後、有名な犬吠埼の灯台ではなくあえてその南にある長崎鼻へ。写真にある通り弧を描く海岸線の横にポツンと小さな灯台があるだけです。本当に最果てって感じがしますね。意外にも人は何人かいて、許可を得ながら釣りをしている人もいました。歩いてすぐの所にかき氷屋があったので寄ってみることに。どうやら関東最東端のかき氷屋を自称しているようです。店の人も「こんな辺境によく来てくださいましたね~」と旅のねぎらいのことばをかけてくれました。頼んだ抹茶小豆ミルク(500円)のかき氷は、とても量が多く口の中に入れるとふわっと溶けて美味しかったです。
 その後は犬吠駅まで歩き写真を撮ろうと思ったらスマホの充電切れ。(西船橋までスマホが使えませんでした\(^o^)/) 本当なら帰りは総武本線で千葉まで戻りたかったのですが、遅れを危惧して成田線をもう一度通って千葉へ。西船橋までを初めて乗る総武線各停で行き、近くのマックでスマホを充電した後、23時頃に牛久の実家に帰宅。牛久駅の駅名標のデザインがいつの間にか変わっていました。

 始終てんやわんやの小旅行でしたがいかがでしたか?再度言いますが、旅の計画は入念にとは行かなくてもある程度はしておいた方が良いです。もちろん、手当たり次第のぶらり旅も悪くはないのですが、ふと時間を忘れてしまうとその後の旅程や帰りが大変になるになる可能性もありますので… それではまた。


旅人キドリ 2023年雙峰祭号