2023 夏旅行記

旅人 出待ち柳・にしきた


 ちょうど梅雨が明け、いよいよ夏本番の暑さが訪れてきた7月23日(日)に夏旅行に行ってきました。今年の夏旅行の行先は東京らしくない東京、緑あふれる青梅・奥多摩です。新型コロナウイルス感染症の位置付けが今年のGW以降に5類感染症に引き下げられてから最初の公式旅行となりましたが、熱中症対策と並行して感染症対策もしっかり講じた上で行っています。

 目的地が青梅・奥多摩と言うことで、牛久が最寄り駅である筆者は青梅線全区間がフリーエリア内に入っている「休日お出かけパス」を利用、つくば駅集合・解散の参加者の皆さんは利用期間開始ほやほやの「青春18きっぷ(夏期)」を利用しました。立川で途中集合する方もいました。

 立川からは土休日に運行される「ホリデー快速おくたま」に乗って青梅へ。夏休み入り直後ということもあって車内はやはり登山や釣り、その他観光に行く乗客でごった返していました。9:30頃に青梅駅に到着し、旅の最初の目的地は青梅鉄道公園。1962(昭和37)年に鉄道開業90周年記念事業として、旧国鉄が開設した公園施設で、D51形蒸気機関車(デゴイチ)や0系新幹線の先頭車両などの明治~昭和期に活躍した車両が保存展示されています。鉄道開業150年事業の一環として公園のリニューアルを行う関係で、今年9月から休園となるそうで、休園前に訪れることができたのは幸いでした。10:30には模型の鉄道パノラマの運転が始まり、電車好きの子どもたちのみならず、その家族やご年配の方々も模型や走る電車に釘付けになっていました。入場料が100円(2023年8月時点)と格安なので、気軽に行けるのも良いですよね。
 11:00に鉄道公園を出発し、青梅線の終着駅奥多摩へ向かいます。奥多摩駅は改札がなく(簡易改札機のみあり)、切符は全て駅員が確認します。古風な建物で木の看板に墨で「奥多摩駅」と書かれた駅舎を見ると、本当にここが東京なのかと思わせるくらいにのどかな感じがします。

 さて午後からは、駅を北上し日原鍾乳洞を目指す班と、途中奥多摩むかし道を歩いて奥多摩湖方面に向かう班に分かれ、それぞれ行動しました。

 まず前者の班ですが、東日原行きのバスが発車する時刻まで駅前を散策し、バス、徒歩とつないで奥多摩のさらに奥の奥へ。鍾乳洞前の売店で昼食をとり、鍾乳洞とその周辺の日原森林館などを訪れました。平日であれば駅から鍾乳洞までのバスが1日5本あるのですが、土休日で全てのバスが途中の東日原止まりだったため、そこから鍾乳洞までを25分程度かけて歩くことに。山道で道幅が狭いにもかかわらず、鍾乳洞へ向かう車がとても多く長い渋滞になっていました。昼食は鍾乳洞組の4人中3人が冷たい蕎麦を購入。奥多摩のきれいな水を使って作られた蕎麦はのどごしが良く、暑い中歩いてきた甲斐もあってより美味しく感じられました。

 そしていよいよ鍾乳洞の中へ。入った瞬間、涼しい……いや寒い!鍾乳洞の中は年間を通じて約11℃に保たれているそうで、半袖だと大分寒く感じるのですが、如何せん通路が狭く常に身をかがめながら歩くのですごく汗をかきました。メインの景観についても、ゴツゴツした石灰岩や鍾乳石の織りなす空間が各色のライトで照らされていてもの凄く幻想的で綺麗でした。日常では絶対に味わえない景観ですね。厳かな鍾乳洞の雰囲気の中で透明で優雅な水の音を楽しめる「水琴窟」や石筍・石柱の数々が乱立する新洞部分などを通り、40分ほど鍾乳洞の中を探索した後、自由行動で近くの一石山神社や日原森林館、日原ふるさと美術館などに立ち寄り、16: 50頃に駅に戻りました。
 奥多摩湖班は、奥多摩駅から途中まで奥多摩むかし道を歩き、途中からバスに乗って小河内ダムの方に行きました。奥多摩むかし道は旧青海街道、つまり現在の車道が完成するまで利用されていた奥多摩の山奥までのアクセス路で、歩こうと思えば小河内ダムまで歩くことができます。今回は時間の都合上、途中の境集落付近まで歩いてバスに乗りました。むかし道の風景の画像を何枚か載せておきます。奥多摩の険しい谷の集落を見ると東京都というよりも、長野県南部と愛知県の深い谷沿いを走る飯田線の風景を思い出していました。
 上の画像のような風景を眺めるのも楽しいですが、奥多摩むかし道沿いで目立つものの一つに、東京都水道局小河内線の遺構があります。小河内線は小河内ダムの建設資材などを運搬する目的で建設された路線で、奥多摩駅から小河内ダムの傍まで延びていました。今も頑張れば近寄って見ることのできる遺構がたくさんあり、山奥でも鉄道貨物が主体だった時代を感じることができます。次のページには、奥多摩むかし道などから観察できる小河内線の遺構の画像を3枚載せています(順番はバラバラなので注意)。実は奥多摩駅を出てすぐの小河内線は円を描くようにして勾配を稼ぐ線形をしており、むかし道沿いから見るとしばらくはかなり頭上の方を走っていることになります。逆に言えば小河内ダムがそれぐらいの高さにあるということで、鉄道の勾配に対する融通の利かなさが実感できると思います。
 奥多摩むかし道でハイキングを楽しんだ後は、路線バスで小河内ダムへ行きました。小河内ダムは東京都民の水道水の確保のために1957年に完成したダムで、貯水容量1億9000万㎥で背後の奥多摩湖は水道専用貯水池としては日本最大級となっています。バス停周辺では食事も摂れるダム建設に関する資料館(奥多摩水と緑のふれあい館)もあり、ダムそのものの大きさだけではなく、ダム建設の苦労やダム湖に沈んだ集落の記録などを見ることができます。下にダムや資料館の画像を載せておきます。個人的に面白かったのが資料館の周囲に道祖神や供養塔といった旧集落にあった石碑が置かれていることです。ダムがない時代の渓谷の匂いはほとんど消え去っていますが、信仰の記憶だけでも救出してわずかに以前の生活が記録されているというわけです。

 東京は山が見えないとよく言われますが、同じ東京都の奥多摩まで行けば都会では味わえない非日常の風景が広がっています。近場で大自然を感じたいと思ったら、都心からのアクセスも良い奥多摩地域へ足を延ばしてみるのはいかがでしょうか。


旅人キドリ 2023年雙峰祭号