2023年晩秋旅行記

旅人 りんくう小美玉・あ


秋の景色もなくなり、晩秋というより初冬の某日、会員数名で栃木県の主に宇都宮市と日光市に行ってきました。今回の旅の目的は、宇都宮市と芳賀町に誕生した新路線に乗ることと、日光の有名な神社仏閣を楽しんだ後、旅の最後に30年経っても色あせない東武鉄道の特急列車に乗ることです。

私の旅はつくば駅からスタートしました。一番最初に乗車する列車は、7:03発、区間快速の秋葉原行きです。つくばエクスプレスは来年で開業から20年が経ちます。日本の総人口が減り続ける一方で、つくば市、つくばみらい市、守谷市はつくばエクスプレスの開業による他県からの主に子育て世代の移住によって、茨城県内では特に自然増減、社会増減ともに人口が増え続けている街です。駅周辺には新築の一戸建てや大きなマンションが乱立しており、毎年ごとに車窓が変化していったのが感じられます。

つくば駅から17分、定刻通り守谷駅に着きました。守谷駅で、他の会員とも合流し、関東鉄道常総線に乗り換えます。やってきたのは、7:34発、2両編成の気動車の水海道(みつかいどう)行きです。しかし、車内放送では、「水海道乗り換え、下館行きです。」と案内していました。車内放送の通り、常総市の水海道駅で、2両編成から1両の気動車、下館行きへ乗り換えました。

水海道を出発し、しばらくすると、列車は田んぼの中を走っていました。進行方向左手には、手前に田んぼ、そして、奥に民家が連なっていました。地理院地図で確認すると、私たちは鬼怒川の左岸を川上に向かって進んでいるようです。民家が連なっているあたりはどうやら、鬼怒川の自然堤防のようで、私たちは、鬼怒川の後背湿地の上を走行しているようです。もちろん、その鬼怒川の上流には、私たちの目的地の一つである新しく開業した路線や、目的地ではないですが、日光市の鬼怒川温泉があります。下妻駅を過ぎると、車窓に果樹園が目立つようになり、樹高の高さから、梨か桃のように見えます。詳しくはわかりませんが、地図で確認すると、付近に梨の直売場があるため、梨を育てているように思います。

下妻市を抜けて、守谷駅から約一時間、筑西市の下館駅に定刻通りに到着しました。
下館駅は、関東鉄道、JR東日本、真岡鐡道(もおかてつどう)の三つの鉄道会社が集まるターミナル駅です。関東鉄道常総線では、SuicaとPASMOに限り交通系ICカードが使えましたが、真岡鐡道では交通系ICカードは使えません。真岡鐡道線のホームの入り口に駅員がパイプ椅子に座っており、硬券を手売りで販売していました。真岡鐡道の「鐡」の字は旧字体で、おそらく「鉄」の字が「金(かね)を失う」というように見えるために旧字体を使っているのだと思います。ちなみに、この冊子の表紙の右下などにある、筑波大鉄研「旅と鉄道の会」のロゴの「鉄」の字も「金失」ではなく、「金矢」の書体になっています。

下館駅で、関東鉄道から真岡鐡道に乗り換え、8:52発の2両編成の気動車の茂木行きに乗りました。下館駅の次は、下館二高前駅ですが、車内放送では単に「二高前」と案内していました。下館駅から26分、列車は真岡市の真岡駅に到着しました。列車到着前の案内放送によると、この列車は2両編成のうちの後ろの1両を真岡駅で切り離して、1両の車になるそうです。

真岡鐡道が一番推しているのは、SLです。真岡鐡道が所有しているSLは、C12形蒸気機関車で、「SLもおか」として運行されています。また、真岡駅の駅舎はSLをかたどった形をしていることで有名です。真岡駅の駅舎内は静かで、とても屋根が高く、ホームを見下ろすことができる細長いラウンジがありました。また、駅の出入り口近くには昔の真岡駅を復元したジオラマが展示されていました。旅程の関係で私たちがSLの走っている姿を見ることはできませんでしたが、ホームの端に停まっているSLを見ることができました。
真岡駅から宇都宮ライトレールの最寄り駅まで移動するために私たちは真岡駅から5分程歩き、台町停留所へ移動しました。バスが到着するまで少し時間があるため、一部の人はバス停近くを散策しました。私は、バスを待っている間なんとなく地面を見つめているとマンホールがありました。マンホールにはなんとなく既視感のあるマークが描かれおり、調べてみると栃木県旗のマークであることが分かりました。私は、いつの間にか茨城県を抜けて栃木県に移動していたことを実感しました。

しばらくしてやってきたバスは、関東自動車が運営する西原車庫行きのバスでした。バスに乗車し、目的地に到着するまでの間に私たちは、この後の自由行動をどのように過ごすかを周りのお客様のご迷惑にならないように話しあっていました。そして、全員が同じ結論にたどり着きました。

バスに揺られること約20分、おおむね時刻表通りに私たちは河原停留所へ到着しました。旅程に書いてある通りに私たちはその停留所から最寄りの新路線の駅へ歩き出しました。しばらくすると、遠くに汚れのない薄灰色のコンクリートでできた陸橋が見えてきました。歩いて駅に到着する前に、宇都宮方面からやってきた、黄色と黒の路面電車が鬼怒川を越えてやってきたと同時に、私は少し悔しい気持ちになりました。

路面電車が駅を出発するのを横目に私たちは目的地である宇都宮ライトレールの飛田城跡駅に着きました。ここから個人行動ですが、私たちは宇都宮ライトレールを全線完乗するために、次の列車が来るまでの約10分待つことになりました。次の列車が来るまでに私たちは、飛田城跡駅を徹底的に観察して、ライトレールの乗り方を確認しました。再び宇都宮方面から黄色と黒の路面電車がやってきました。

今回乗車した宇都宮ライトレールは、その宇都宮市で2023年8月に新規開業したライトレール路線です。本来宇都宮駅に再集合するまで自由時間とすることを想定していましたが、結局全員が終着の芳賀・高根沢工業団地駅まで行った後、折り返して宇都宮駅まで向かいました。芳賀・高根沢工業団地駅は名前の通り工業団地のそばに位置しており、周りには特に目立つものもなく本当に通勤用に作られた駅だという印象を持ちました。

私たちは終点駅で軽く写真を撮った後折り返しました。ライトレールに乗った印象は、思ったより遅い!専用軌道の部分もあるのですが、基本的に3-40km/hくらいで走行する上に停留所でこまめに止まるため、とても遅く感じます。それでも宇都宮駅に近づくほどお客さんの数は増えていき、最後はそれなりの混雑を見せました。始点駅である宇都宮駅東口駅の停留所は到着後かなりの人でごった返していました。
1時間ばかりの昼休憩を挟んだ後、私たちは宇都宮駅からJR日光線に乗車しました。日光線は宇都宮駅から日光駅を結ぶ40.5kmの路線です。走る車両は、新進気鋭のE131系電車です。個人的には京葉線沿線民であるため元京葉線の205系も好きでしたが、残念ながら全て引退。ちなみに、日光線は新型車両導入後両数が減ったことで混雑が激化し、積み残しまで発生したことで話題になりました。

日光線では終点の日光駅まで乗車し、そこからはバスに乗り、山の方を目指しました。紅葉の時期は少し過ぎてきましたが、それでも一部には葉っぱが色づいている木もあり、わずかばかりの紅葉が楽しめました。山の中へと入っていくと、そこには立派な寺社の数々がありました。そして、その中でもやはり最も人気で、最も有名なのが日光東照宮です。我々はかなりぎりぎりの時間に入場したにも関わらず、中は人でごった返していました。有名な「三猿」や「陽明門」を見学し、天気は少し雨がちらつく状況でしたが、それでも満足のいく観光ができました。
東照宮を後にして、付近の寺社も見学したのち、今度は東武日光駅へと向かいました。東武日光駅から乗車したのは、ずばり、スペーシアのコンパートメント、つまり個室です。これはかなり感動的な体験でした。車両の中にプライベートな空間が用意されるという状況自体、なかなか体験できるものではありません。それを今回は東武日光から北千住まで乗車。外は日も落ちすっかり暗くなっていましたが、通勤客でごった返す駅や列車の様子を個室から眺めるというのは特別な気分にさせてくれるものでした。あっという間に北千住駅に到着、そこで全体は解散となりました。

今回の旅のハイライトは、もちろんライトレールや東照宮もよかったのですが、やはりスペーシアの個室が個人的には最も印象に残りました。今後スペーシア X の増便によりスペーシアの運行頻度が減る可能性もあります。個室というのは今の日本の鉄道ではなかなか簡単にできる体験ではありません。みなさんにも是非一度味わっていただきたい乗車体験でした。


旅人キドリ 2024年新歓号