(雙峰祭)秋蛾ブーム🐸🍂

カテゴリー:コラム雙峰祭2021

投稿日 2021930

更新日 2021年10月20日

秋も深まり昼夜ともに寒くなってきた11月、野外で採集しているとよく聞かれる…
「こんな時期に蛾なんているの?」

じつはいます!!!

日本で見られる蛾には花や木と同じく季節性があり、年中見られる蛾もいれば、桜の花のように短い期間にのみ成虫が現れる種も存在する。
それは一般に昆虫採集の時期には遅いと思われがちな秋や冬も例外ではない。
おそらく豪雪地帯でなければ、成虫が1年中見られるというのは蛾の魅力であると思う。
今回はこの雙峰祭の時期、秋に出る蛾に注目していくつか紹介していこうと思う。

9月

エゾキイロキリガTiliacea japonago (Wileman & West, 1929)
場所によっては9月頭ごろから見られる黄色い蛾。学名のTiliaceaとあるように、幼虫はアオイ科シナノキ属(Tilia)を食す。
山吹色にこげ茶色の線が色づき始めた葉っぱのような色をしていて秋っぽい。


シロクビキリガLithophane consocia (Borkhausen, 1792)
秋に出る蛾の仲間には成虫で越冬する種がそれなりにいて、本種そのうちの一つ。見た目がタイプ過ぎる。
真冬は冬眠(?)休眠しており、春に暖かくなるともう一回見られるようになる。
本格的な配偶活動は越冬明けにしていると思われるが、秋のうちに羽化するメリットはあるのだろうか…?
暖かくなったら一斉に配偶行動から始められるようになのか、生態に関する妄想が膨らむばかりである。


ウスキトガリキリガTelorta acuminata (Butler, 1878)

キトガリキリガTelorta edentata (Leech, [1889])
落葉した葉の色味をしていて、落ち葉にいたらすぐに見つけられる自信がない。。

10月

クロウスタビガRhodinia jankowskii (Oberthür, 1880)
本種は10月頭の短い期間に山地で発生するので、つくば住みの我々にはそうそうお目にかかれない代物。
後に出てくるウスタビガに比べて翅が煤けたように黒くなっているのが特徴。闇堕ちヒヨコ🐥。


ツチイロキリガVulpechola vulpecula (Lederer, 1853)
シャープな翅形が完璧だし内横線と外横線が二重になっててたまらない…
本種もエゾキイロキリガと同じくシナノキ属をホストとしており、局所的な分布を示しているなかなかの稀種。
そもそもシナノキの仲間は日本海側や寒冷めな山地に多く生えており、シナノキを食べる蛾は関東住みには縁遠い印象があるため余計よく見える。
ご当地キティを集めたくなる心理と一緒で、生き物好きは往々にしてご当地モノに弱い。期間限定モノにも弱い。(至言)


サヌキキリガElwesia sugii Yoshimoto, 1994
めちゃくちゃ格好いい南方系のヤガ。直線的な白い縁取りが幾何学的で刺さる()
翅の先がギザギザなのとトサカがあるのも推せるポイント。

11月



ウスタビガRhodinia fugax (Butler, 1877)
前に紹介したクロウスタビガによく似た形をしている。
筑波山や筑波大学構内でも11月中~下旬になると街灯などの明かりでパタパタしているのが見られるだろう。
闇堕ちしていない正真正銘のヒヨコ!🐥と言いたいところだが、場所によってはクロウスタビガとは比べ物にならないくらい真っ黒になることもあるらしい。。(気になる方は「ウスタビガ_黒化型」でぜひ調べて頂きたい。)いつか見てみたいもの。


ウスズミカレハPoecilocampa tamanukii Matsumura, 1928
最後に紹介したいのは本種。
体の芯から凍てつくような11月の山の中、こんなとこで蛾なんて見れるのか?という時期に本種は灯りにやってくる。
気温も1ケタ台に下がった深夜、このウスズミカレハを見るとあまりの可愛さに寒さも忘れてしまうのであった。。
この写真からだと伝わりにくいのだが、顔も手も体もすべてモコモコの毛に覆われておりもう哺乳類にしか見えない。愛嬌をモス型に固めたものだなぁ…

寒い中で見る蛾というのはお正月に寒い中で貰うおしるこのような(?)、なんか格別な良さがあると思っている。
みなさんも今年の秋冬はぜひ街中の蛾たちにも目を向けてくだされば幸いである。

最後まで読んで下さりありがとうございました!🐸